「断捨離をすると、お金が貯まるようになる」
そんな話を聞くことはないでしょうか?確かに、いらない物を捨てれば部屋はきれいになります。でも、それだけで本当にお金が貯まるのでしょうか??
少し気になって調べてみたところ、どうやら「断捨離」「節約」「貯める」「稼ぐ」は、まったく別々の話ではなさそう。
むしろ、暮らしを整えることから始まる、一つの流れとして考えると納得できることも。
お金を貯める方法は、実はとてもシンプル
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の金融教育資料では、収支を改善する方法を大きく、
「支出を減らす」
「収入を増やす」
「貯蓄や運用を行う」
と整理しています。
金融庁も、家計管理の基本について、
「収入と支出をきちんと把握すること」
「収支を黒字にすること」
「黒字分を貯蓄すること」
と説明しています。
つまり、
節約する。
稼ぐ。
貯める。
この三つは、本来セットなのです。
ところが私たちは、つい別々に考えてしまいます。
「もっと貯金しなくちゃ」
と思えば節約を考え、
「将来が心配」
となれば投資を考え、
「お金が足りない」
となると収入を増やそうと考える。
でも、その前にもう一つあるのではないか。
それが、「自分は何を持ち、何にお金を使っているのかを知ること」
ここに、断捨離が関係してくる。
断捨離は「捨てること」より「買ったものを見ること」
クローゼットを整理すると、
「似たような服が何枚もある」
ということはないだろうか?
引き出しを整理すると、
「同じような文房具を何個買ったんだろう」
と驚くこともある。
食品庫から賞味期限の切れた食品が出てきたり、洗面所から使いかけの化粧品がいくつも出てきたりすることがあるのは私だけではないだろう。
ここで目の前に並んでいるのは、単なる「物」ではない。
かつて自分が使った「お金」。
3,000円の服も、500円の雑貨も、100円ショップでなんとなく買ったものも、一つひとつは小さくても、すべて過去の支出。
だから断捨離は、
「何を捨てるか」
を決める作業であると同時に、
「私は何にお金を使ってきたのか」
を目で見る作業なのだ。
家計簿では数字として見ていた支出が、実物として目の前に現れる。(家計簿をつけていなくても!)
「買う前に考える」が自然にできるようになる
一度大量のものを整理すると、買い物をするときに少し考えるようになる。
「これ、本当に使うかな」
「家に似た物がなかったかな」
「これを置く場所はあるかな」
そして、もう一つ。
「いつか、これをまた捨てることになるかもしれない」
ということまで考えるようになる。
つまり、断捨離によって買い物の前に小さな「間」が生まれ、その間が、衝動的な買い物を減らす役割を果たす。
行動経済学には「メンタル・アカウンティング」という考え方がある。人は頭の中で「食費」「娯楽費」「洋服代」など、お金を心理的に分類しながら使うそう。
実際の研究でも、予算を意識することや支出を把握することは、家計管理と関連することが報告されている。
つまり、「何にどれだけ使っているのか」を見えるようにすることは、お金を残すための基本なのだ。
断捨離は、物を通じた「支出の見える化」と考えられる。
物が多いと、「お金」だけではなく「時間」も使う
もう一つ、見落としやすいものがあります。
物を持つためには、お金だけでなく時間が必要です。
買う。
運ぶ。
しまう。
探す。
整理する。
掃除する。
修理する。
そして最後には処分する。
物は、買った瞬間だけコストがかかるわけではありません。
持っている間も、少しずつ私たちの時間と注意を使っています。
心理学・神経科学の研究では、複数の視覚刺激が同時に存在すると、それらは私たちの限られた注意資源をめぐって競合することが示されている。
また、UCLAの研究では、自宅を「散らかっている」「未完成な状態」と表現した女性ほど、ストレスに関連する指標や気分との関連があるそうだ。
ただし、ここは注意が必要。
「部屋を片づければストレスが必ず減る」と因果関係まで証明されたわけではない。
それでも、物の多さと私たちの注意や心理状態が無関係ではない、ということは興味深い。
そして、断捨離は「稼ぐこと」にもつながっていく
ここが、一番面白いところ。
節約というと、
「コンビニでの買い物を我慢する」
「安い物を買う」
「電気をこまめに消す」
というイメージではなかろうか?
もちろん、それも大切だけど、節約には限界がある。
一方で、家計を良くするもう一つの方法は「収入を増やすこと」。
ここで必要になるのが時間。
勉強する時間。
新しいことを始める時間。
仕事を工夫する時間。
自分の能力を高める時間。
物を減らして、買い物に使う時間、探し物をする時間、管理する時間が少し減れば、その時間を別のところへ使えるようになる。
もちろん、
「断捨離をすれば収入が増える」
という研究結果があるわけではない。念のため。
そこまでは言わないけど、、
物を減らす
↓
無駄な支出に気づく
↓
買い方が変わる
↓
お金が残る
↓
管理に使っていた時間や注意が減る
↓
その余白を、学ぶことや働くことに使える
という流れは、とても合理的で納得感が持てる。
「貯める」は最後にやってくる
こう考えると、お金を貯めるというのは、最初にやることではないのかも知れない。
まず、自分にとって必要なものを知る。
次に、必要なところにはきちんとお金を使い、必要でないものには使わない。
そして、収入と支出の間に生まれたお金を残す。
その一部を将来のために貯蓄したり、目的に応じて資産形成に回したりする。
金融庁も、資産形成について考える前提として、家計管理とライフプランニングを挙げている。
投資を始めれば自動的にお金の問題が解決するわけではない。
投資には元本割れの可能性もある。
だからこそ、
「何の商品を買えば儲かるか」
より先に、
「私はどんな暮らしをしたいのか」
「そのために何にお金を使いたいのか」
を考えることが大切なのだ。
子どもに伝えたい「もの」と「お金」の話
実はJ-FLECの「金融リテラシー・マップ」のファミリー層向けの項目には、
「ものを大切にするよう、子を日常的に指導できる」
という内容がある。
さらに、お金には限りがあり、その範囲の中で家計を管理することの大切さを子どもに伝えることも挙げられている。
金融教育というと、貯金、利息、株式、NISA……そんな話を想像しませんか?
けれど、そのずっと手前に、
「ものを大切にすること」
があるのだ。
「欲しい」と思ったら何でも手に入れるのではなく、
本当に必要なのか考える。
手に入れたものを大切に使う。
限りのあるものの中から選ぶ。
これは、「もの」との付き合い方でもあり、お金との付き合い方でもある。
そして子どもの頃から育てたい、大切な「生きる力」の一つでもある。
お金の勉強は、「どう生きたいか」を考えること
近々、幼稚園でもお金について学ぶセミナーを行ないます。
お金の勉強というと、「投資」や「NISA」の話だけのように聞こえるかもしれないけど、そうじゃなく、お金は、貯めることそのものが目的じゃないはず。
お金は自分が大切にしたいことに使うためのもの。
家族との時間。
子どもの教育。
旅行。
趣味。
学び。
老後の安心。
何に使いたいかは、人によって違う。
だからこそ、まず自分の暮らしを見つめる。
もしかするとその最初の一歩は、銀行口座を見ることでも、投資の本を読むことでもなく、
クローゼットの中を一度全部出してみることなのかもしれない。
ものを整理すると、暮らしが見える。
暮らしを見ると、お金の使い方が見える。
お金の使い方が見えると、自分が何を大切にしているのかが見えてくる。
そう考えると、
断捨離も、節約も、貯蓄も、投資も、稼ぐことも、
結局は全部、
「自分はどう生きたいのか」
という同じところにつながっているのだと思う。
参考資料・参考文献
・金融庁「NISA特設ウェブサイト 資産形成の基本」
・金融経済教育推進機構(J-FLEC)「金融リテラシー・マップ」
・金融経済教育推進機構(J-FLEC)金融経済教育関連資料
・Darby E. Saxbe & Rena Repetti, “No Place Like Home: Home Tours Correlate With Daily Patterns of Mood and Cortisol,” Personality and Social Psychology Bulletin, 2010.
・Stephanie McMains & Sabine Kastner, “Interactions of Top-Down and Bottom-Up Mechanisms in Human Visual Cortex,” The Journal of Neuroscience, 2011.
・Richard H. Thaler, “Mental Accounting and Consumer Choice,” Marketing Science.
・Peetz & Buehler et al. ほか、家計予算・支出行動に関する消費者行動研究。
※「断捨離をすれば貯蓄額や収入が増える」という直接的な因果関係を示す十分な研究があるわけではありません。本記事では、家計管理・消費行動・注意やストレスに関する研究をもとに、その関連性について考察しています。
※『断捨離』はやましたひでこ氏の登録商標です。

コメント